自動車製造技術の進歩により車の耐久性は向上しており、故障リスクも低くなりつつあります。以前は新車で購入した車は10年経つと寿命だとされてきましたが、今ではメンテナンスをきちんと行えば10年以上乗ることが可能です。
ただし、10年落ちの車となると新車よりも故障リスクが高まり、燃料費などの維持費の負担も大きくなるとされています。では、具体的にどのような維持費が増えていくのでしょう?
この記事では、その増えていく維持費について、項目ごとに紹介していきます。10年落ちの車を乗り続けたほうがいいか、早めに乗り換えるべきか、判断する際の参考にしてみてください。
車の年式とは?
車の年式とは、車が製造されて市場に出る前の検査を通過した後に運輸支局や軽自動車協会に初めて登録された年のことです。
車検証の「初年度登録」という欄に記載されている年が、年式になります。また、車検証の登録年月日は車検証の内容が変わると更新されていくものなので、年式と間違えないように気を付けましょう。
初年度登録を見れば、製造後に初登録されてから現在までにどの位の期間が経過しているかが分かります。
高年式、低年式について
自動車業界では特に中古車を扱う場合、「高年式」「低年式」という言葉が使われます。
高年式とは、年式が新しい車のことで、具体的には初年度登録から3年未満の車を指します。
低年式とは、初年度登録からかなり年数が経過した、年式が古い車という意味です。具体的には7年以上経過した車のことをいいます。
また、初年度登録からの経過年数を示すのに「年落ち」という言葉も使います。そのため、「5年落ち」の車だと、初年度登録から5年経過しているという意味です。
車は初年度登録から年数が経過すると、どうしても部品が劣化、消耗していくものです。しかし、技術の進歩により性能や耐久性などが向上しているため、車の寿命も少しずつ延びています。
以前は初年度登録から10年でしたが、15年は走行できる状態だとされています。とは言っても部品の劣化は止められないので、どうしても途中で交換の必要が出てくるでしょう。
また10年乗り続けると、エンジンなどの大きな動力を生み出している主要部分への負荷が大きいので、故障のリスクも高まります。
10年落ちの車は、故障のリスクが高いとされていますが、年式だけではなく、走行距離によっても車の寿命や故障リスクには差が生じてきます。
走行距離は平均年間10,000キロとすると、単純計算で10年10万キロです。一般的に10万キロを超えると、車は寿命に近づくとされています。
10年落ちの車でも走行距離が10万キロに満たない場合は、部品の劣化や消耗が軽いのでまだ使える場合もあります。
ただし、車はあまり動かさないと逆に故障のリスクがあるとされています。10年落ちで走行距離が極端に少ない場合、エンジンの状態が悪いこともあるので気を付けましょう。
車の維持費について
車の維持費といっても、様々な費用が含まれています。
まず、車を所有する時に避けては通れないのが税金です。毎年納める自動車税(種別割)や、車検時に納める自動車重量税などが挙げられます。
また、万一の交通事故時に備えて補償を万全にしておくための、自賠責保険や自動車保険の保険料も支払わなければなりません。
車を動かすための燃料費、駐車スペース確保のための駐車場代もかかるでしょう。
そして車の部品は劣化、消耗していくので、安全に走行するためには点検や整備も欠かせません。メンテナンスにかかる費用も準備しておく必要があります。
車に関する税金は、自動車環境性能割、自動車税(種別割)、自動車重量税の3つが挙げられます。
自動車税環境性能割は、車を購入する時に1回だけ納める税金です。環境負荷軽減、つまり燃費基準値達成度に応じて税率が決められており、非課税の場合もあります。
自動車税(種別割)は、車の排気量によって税額が決められており、排気量500㏄ごとに税額が上がります。毎年4月1日時点での車の所有者の住所地に税金の納付書が郵送され、1年分をまとめて納める形です。軽自動車は金額が一律で10,800円、普通車の場合は30,000円~100,000円程です。
自動車重量税は、車の重量に応じて税額が決まり、0.5tごとに税額が上がります。車の購入時と車検時に次回の車検までの期間をまとめて納めることになっています。軽自動車の場合は、車両の重さにかかわらず定額なので年間3,300円を納付します。普通車の場合は約10,000円~30,000円程です。
車の保険料は、自賠責保険と任意で加入する自動車保険料の2つが挙げられます。
自賠責保険は、法律で公道を走行する車に加入義務づけられている強制保険です。自動車重量税と同様で、車検時にまとめて保険料を納めます。保険料は車種などによって決まっていますが、約20,000円~30,000円程です。
自動車保険は、ドライバーの意思によって加入するかを決めることができますが、自賠責保険は対物賠償をカバーしていないので、万一に備えて加入するドライバーがほとんどです。
保険料は車種、補償の対象や範囲、ドライバーの年齢などによって大きく違ってくるので一概には言えませんが、年間で数万円かかるでしょう。
走行にかかる費用のうち、燃料費が大きなウェイトを占めます。車種、車を使う頻度、走行距離、住んでいる地域などによって燃料費は異なるでしょう。
燃費性能の悪い車だと、走行距離が少なくてもガソリンを多く消費するので燃料費がかかります。例えば、平均年間走行距離10,000㎞、ガソリン価格150円/ℓとします。
燃費18㎞/ℓの軽自動車だと年間のガソリン代は約83,000円、燃費10㎞/ℓの普通車だと年間のガソリン代は約15万円となるため、かなり大きな出費となることが分かるでしょう。
また、自宅に駐車スペースや車庫がない場合、駐車場を借りる必要があります。地域によって異なりますが、都心部だと1ヶ月に数万円かかることも珍しくありません。
通勤に高速道路を使っている場合、高速代もプラスしてかかることになります。
メンテナンス費用は、車検や法定点検、オイル交換といった車の点検、整備に必要な費用です。
車検は、車が保安基準を満たしているかどうかを調べるものです。初回は車の購入から3年後、以降は2年ごとに受けるのが法律で規定されています。
かかる費用は車種によって違ってきますが、数万円かかるのが一般的です。部品交換の箇所が多い、高額な部品の交換が必要となると、さらに費用がかさみます。
また、オイル交換やタイヤ交換などの整備も必要です。頻度は消耗、劣化度合いによって違ってきますが、概ね半年~3年ごとの間隔になるでしょう。走行距離が多いとその分、部品の劣化が進むので頻度が早まります。
10年落ちの車の維持費について
車の年式が10年を超えてくると、一般的に維持費が徐々に増えていきます。
まず初年度登録から13年経過すると、自動車税(種別割)や自動車重量税が増額となります。自動車重量税に関しては18年経過すると、さらに増額されます。
また、燃費性能が落ちるので燃料費もかさんでくるでしょう。そして、部品の劣化や消耗が激しくなるため、交換する必要があります。高額な主要部品の交換の必要が出てくるので、メンテナンス代がかかるとされています。
車の年式がある一定の年数になると、税額も上がります。
自動車税(種別割)では、初年度登録から13年以上経過すると、13年未満の税額よりも約15%、軽自動車は約20%の増税となります。車種によって金額は異なりますが、4,000円~15,000円程高くなるということです。
しかし、ハイブリッド車のようなエコカーであれば重課の対象とならないため、増税になることはありません。
自動車重量税の場合も、初年度登録から13年以上を経過すると13年未満の税額より約28%、軽自動車なら約24%の増税となります。金額にすると3,000円~20,000円程高くなるでしょう。
また、自動車重量税は初年度登録から18年以上経過するとさらに税額が上がります。
なお、ハイブリッド車のようなエコカー対象車は増税の対象外となっています。
自賠責保険料は車の税金とは違い、車の年式とは関係ありません。そのため、初年度登録から何年経過しても支払う金額は同じです。
1年目の新車でも10年落ちの車でも、車種が同じなら自賠責保険料は変わりません。ただし、毎年保険料の見直しが行われているため、金額が据え置きとなる年もあれば増減する年もあるので気を付けましょう。
任意の自動車保険料は自賠責保険料と違い、車の年式が古くなると車の性能が落ち、事故のリスクが高くなるため増額となる場合が多いです。
また年式が古い車は、車両保険の補償金額が下がるシステムになっています。その理由は、年式の古い車は故障のリスクも高く、車体の価値も下がるからです。
そのため、車両保険を付けていても、事故による車の修理代にかかった費用全てがカバーされない場合もあります。
また、あまりに年式が古いと車両保険自体付けられないケースもあります。
それなりに車を使っていれば、平均年間走行距離は一般的に約10,000㎞です。10年落ちの車となると、大体走行距離は10万㎞前後であると予測できます。
10万㎞となると走行距離としては多いほうとなり、当然エンジンなどの主要部位への負荷もかなり蓄積しています。こまめにメンテナンスしていても、新車と比べると燃費性能も落ちてしまっているでしょう。
そうなると給油回数も増え、徐々にガソリン代の占める割合も多くなって燃料費もかさんでいきます。
車に使われている部品は耐久性に優れていますが、もちろん永久的に使うことはできません。走行距離や年数によって、交換時期が大体決まっています。
その上、10年落ちの車となると、今までは交換せずに済んだ部品も劣化や消耗が進み、交換の必要が出てきます。交換しなければならない部品の数が増えるので、メンテナンス費用がかかってしまうことになるでしょう。
10年落ちの車は部品交換が多くなりやすい
車には、走行距離が多いと消耗しやすい部品もあれば、時間が経つにつれて自然に劣化する部品もあります。
永久的に劣化しない部品はないので、安全に走行するためには定期的に点検、部品交換の必要があります。
主な部品の交換の頻度を以下にまとめました。
エンジンオイル | 半年ごと |
---|---|
バッテリー | 約3年に1回 |
ファンベルト | 走行距離約40,000㎞ごと |
タイヤ | 約4年に1回 |
ブレーキパッド | 約40,000㎞ごと |
他にもワイパーゴムやウォッシャー液の補充など、交換や補充が必要な部品は20ヶ所以上に及びます。
10年落ちの車となると、さらに交換しなければならない部品の数が増えるでしょう。中でもゴム部品は紫外線を浴び、温度差の激しい環境にさらされているので経年劣化が進みます。
バンパーなどの樹脂部品も劣化しやすく、変色や破損を招くこともあります。
年式が古くなり、走行距離も多くなると、これまでは交換しなくても良かった比較的高額な主要部品も劣化が進み、交換の必要が出てきます。
また、ブレーキやエンジンに関わる重要な部品は安全性にも関わるので、10年で交換することが推奨されています。
例えば、タイミングベルトやハブベアリングの交換にかかる費用は、約10万円です。他にも、パワーウィンドウなどの電装品やエアコンの不具合も出やすくなり、修理代で数万円から十数万円はかかる可能性があります。部品一つでもかなり高額となります。
さらに交換箇所が増えると、修理代だけで中古車1台購入できる程の金額が必要となってしまうこともあるでしょう。
特に人気の車種は数年ごとにモデルチェンジされて、新しいモデルの車が発売されることが多いです。また、新しい車種が発売されると古い車は製造中止になることもあるでしょう。
どんどん車が新しくなると古い車は流通しにくくなり、その車の部品の流通も徐々に減っていきます。
自動車メーカーと部品を扱うメーカー間は、最長でも10年間は部品を流通させるという取り決めをしています。しかし、10年を経過すると部品を流通させなくてもよいため、人気のない車種は特に部品が手に入りにくくなってしまうでしょう。
メーカーに問い合わせても交換が必要な部品の在庫がなく、交換できないと乗り続けることも難しくなります。
取り寄せても車が製造終了になっていれば、市場に出回っている数もかなり少ないため、見つからない可能性もあります。そうなると修理できないため、最悪車を手放すことになってしまうかもしれません。
10年落ちになる前に車は買い取ってもらうのがおすすめ
車は初年度登録から年数が経過し、年式が古くなると税金が増額となったり、燃費性能が悪くなったりして維持費が徐々にかさんでいきます。
何より劣化が進むので、10年を境に交換しなければならない部品が増え、高額な主要部品の交換も必要となります。その結果、メンテナンス費用が予想以上に増えていくことになるでしょう。
また、故障リスクも高くなり、廃車になってしまうという可能性もゼロではありません。中古車市場においても走行距離が10万㎞の大台にのってしまうと、買い取りが難しくなる場合もあります。
車は10年落ちになる前にできれば買い取りに出して、乗り換えることをおすすめします。