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社用車を利用しているという企業は多いでしょう。車を購入した時には、会社の資産として減価償却を行っていく必要があります。
そして、しばらく乗った後に車を売却することも出てきます。その際に会計処理はどのように行えば良いのか、仕訳はどのようにすれば良いのか分かりにくいこともあるかもしれません。
今回は、減価償却している状態で売却する時の注意点や仕訳方法の違いについて、具体例や基本的な知識も含めて解説をしていきます。
減価償却とは?基本的な知識
企業として事業を行う際には、資産として「建物」「車」「備品」などの購入をする時があります。
これらの資産は一般的に、購入した年度だけではなく、次年度以降も使用し続けるものになるでしょう。このような場合、使用年数が1年を超える財産にあたるものが「固定資産」です。
固定資産は、使用し続けると時の経過に伴って、機能性が低下していく資産もあります。そうすると、固定資産の価値は少しずつ下がっていきます。
そのため、固定資産の購入額を使用期間に合わせて費用として計上します。このように、貸借対照表における固定資産の段階的減少をさせていく会計処理の方法が「減価償却」です。
減価償却の方法とは?
減価償却の方法としては2つに分かれます。「定額法」と「定率法」です。どちらの方法にするかは、最初に決めなければいけません。
企業の経営状況に応じて使用方法を変えることが大事です。双方にはポイントがありますので、知っておくと良いでしょう。
それでは、2つの方法について詳しく解説していきます。
定額法は、償却させる資産を耐用年数に応じて毎年均等に計上する方法です。
例えば200万円の資産があり、耐用年数が4年だとすると毎年50万円ずつ費用として計上し償却することになります。
毎年同じ費用が計上できるので会計も容易であり、分かりやすい方法です。
また昨今の社会状況を考えると費用の計上が一定なので、企業として安定している経営状態であれば毎年の税金についても使いやすいやり方となっています。
定率法は、償却させる資産を毎年一定の割合で償却額を計上していく方法です。
例えば、200万円の資産があり、耐用年数4年で償却率が0.5だとすると以下のように計上ができます。
2年目・・・1,000,000×0.5=500,000円
3年目・・・500,000×0.5=250,000円
4年目・・・250,000×0.5=125,000円
ここでポイントとなるのは、購入した時に償却できる経費が多く計上できるということです。
車の減価償却費が決まる4つの項目
車を減価償却する時の計算方法は、法人では「定率法」、個人事業主では「定額法」で計上するように原則定められています。
しかし、車については自主的に定率法と定額法を選択できます。
計上方法を変える場合には、税務署に届け出る必要があります。届け出を行わないと、自動的に原則通りの償却方法で減価償却をすることになりますので注意が必要です。
次からは、車の減価償却費が決まる4つの項目について詳しく解説していきます。
耐用年数は、資産の内容によって異なります。
車に関して言えば、事業者の種類や車種に応じて耐用年数が変わります。
- 普通自動車(6年)
- 軽自動車(4年)
- ダンプ式トラック(4年)
- ダンプ式以外のトラック(5年)
- 普通自動車(4年)
- 積載量2トン以下の貨物自動車、総排気量2L以下の小型車(3年)
- 総排気量3L以上の大型乗用車(5年)
- 上記以外の小型車(4年)
このように、状況が異なりますので事前にチェックしておくと良いでしょう。
減価償却は、資産の購入時にかかる取得価額が基準です。つまり、車の場合の減価償却としての内訳は以下を取得価額に盛り込む必要があります。
- 車両本体価格
- オーディオ
- カーナビ・ETC車載器などのオプション代
- 納車までにかかる費用
しかし、各種税金や保険料などは取得価額に含めなくても良いと定められています。詳細は、以下の通りです。
- 自動車税
- 自動車取得税
- 重量税
- 自賠責保険料
- 登録費用
- 車庫証明費用
- リサイクル料金
経費の計上する時は、上記の項目については気をつけて対処していきましょう。
新車に関して解説してきましたが、中古車の減価償却はどのようなやり方なのでしょう?
中古車は算出方法があり、耐用年数が個々に算出されます。大抵の中古車であれば、耐用年数が短くなります。そのため、新車と比較すると中古車の方が期間を短く償却することが可能です。
企業の方針にもよりますが、なるべく早く償却額を多く計上したい時には、中古車で購入するのがメリットも大きくなります。
中古車の耐用年数の計算式は、以下のようになります。
国税庁の減価償却資産の償却率表を確認すると、2007年4月1日以降に取得した耐用年数2年の資産は、定率法の償却率が100%と定めています。したがって、耐用年数が2年になる中古車だと、1年目で減価償却を行うことが可能です。
それでは、中古車の耐用年数を2年にするには、新車から何年経っていれば良いのでしょう?
3年10か月以上であれば、耐用年数が2年になります。定率法の計算式は上記の①を採用すると、以下の通りです。
1年未満の端数は切り捨てになり、耐用年数は2年になります。
新車登録をした時から3年10か月以上の中古車については、定率法で減価償却する購入年で全額を償却できることになります。
しかし、車の減価償却については毎月の計上になりますので、気をつけましょう。
車を購入すると資産として計上することになりますが、車をリース契約して持つことも可能です。
企業向けカーリースの利用は、年々増加傾向にあります。
リース契約にすると、契約年数が決まっていて、税金や保険料も含まれています。さらに、車検や整備費用もオプションでつけることも可能です。
購入とリースを比べた場合、車を購入する際の気をつけるべきポイントがありますので、以下に挙げていきます。
- 毎年減価償却をする必要があり、会計が複雑になるので手間がかかる
- 車を売却する時も、会計上の処理に手間がかかる
- 自動車税や重量税、自賠責保険料などの支払いが必要
- 車を購入する時にまとまった資金がかかる
会社で自動車を管理する担当部署にとっては負担の軽減になりますし、毎月のリース料金は費用として計上できます。
通常、自動車は取得時期も異なっていれば車検や整備をする時期も異なり、管理しにくいところがあります。しかし、リース契約にすることで毎月同じ費用を計上でき、メンテナンスなどもリース会社に任せることができることは、会社にとってもメリットが大きくなるでしょう。
減価償却中に車売却をすることは可能なのか
社用車を購入した時に資産になり、減価償却が必要になることは理解できたでしょう。
そうなると、減価償却中に車の売却はできるのか、疑問に思う方もいるかもしれません。
先に結論を言うと、売却は可能です。しかし、売却する時には発生した金額から「収益」にするか「損益」にするかを仕分けしていく必要があります。
車を減価償却中に手放す時の仕訳方法はどうするか
減価償却中に車の売却はできる、ということをお伝えしました。しかし、その際には仕分けが複雑になってしまいます。
仕訳方法は車の売却方法によって異なります。4つの売却方法における仕訳のやり方について、詳しく解説していきましょう。
ケース1は、減価償却中に売却した時の仕訳方法です。
例えば、事業用として購入した車(200万円)を、定額法で耐用年数4年間として減価償却するとします。
3年間車に乗って、4年目で現金400,000円で売却した場合について仕訳を行います。
4年目に現金400,000円で売却すると車売却損は100,000円、減価償却累計額は3年間なので150万円になります。
仕訳としては以下の通りです。
・現金:400,000円
・売却損:100,000円
減価償却累計額:1,500,000円
車の売却の際には、購入した時の勘定科目は残しておくのが通例です。減価償却累計額を使って調整していきます。
ケース2は廃車にした時の仕訳方法です。
例えば、事業用として購入した車(200万円)を定額法で耐用年数4年間として減価償却し、3年間車に乗った後、4年目で廃車した時で考えます。
今回は、廃車費用については無しで仕訳をしていきます。
・廃車損:500,000円
減価償却累計額:1,500,000円
この時、廃車した時の車の価値は、2,000,000-1,500,000=500,000円ですので、廃車損は500,000円になります。
廃車損については、車の購入額から減価償却分を引いた額を計上します。
ケース3は、車を乗り換える時の仕訳方法です。
例えば、事業用として購入した車(200万円)を、定額法で耐用年数4年間として減価償却し、3年間車に乗った後、4年後半年で150,000円で売却して新しく300万円で車を購入したとします。
耐用年数5年間として、定額法で減価償却した場合です。
車を乗り換えた場合は、以前乗っていた車と現在の車を分けて仕訳をすることが必要となります。
以前乗っていた車の減価償却累計額は3年と6か月になるので、1,500,000+500,000×6/12=1,750,000円になります。
現在の車の減価償却費は、3,000,000÷5=600,000円です。半年分の減価償却費が600,000×6/12=300,000円になります。
・現金:150,000円
・減価償却費:250,000円
・売却損:100,000円
減価償却累計額:1,750,000円
・減価償却費:300,000円
減価償却累計額:300,000円
このように、分けて計上することがポイントです。
売却益と売却損の考え方は、減価償却を行った時の車の価値がどれくらいあるかによります。
例えば、事情用として購入した200万円の車を450,000円で売却したとします。その際、耐用年数が4年間の時と5年間で定額法で減価償却した場合です。
耐用年数が4年間の場合であれば、年間の減価償却費は2,000,000÷4=500,000円です。
この時は、減価償却費より車の売却額が低くなっているので、売却損が50,000円になります。
・現金:450,000円
・減価償却費:500,000円
・売却損:50,000円
耐用年数が5年間の場合であれば、年間の減価償却費は2,000,000÷5=400,000円です。
この際は、減価償却費より車の売却額が高くなっているので、売却益が50,000円になります。
・現金:450,000円
・減価償却費:500,000円
・売却益:50,000円
法人が車を売却した際の仕訳方法
それでは、法人が車を売却した場合の仕訳方法はどのように行うのでしょう?
売却時に損益が出る時は、前述した通り「固定資産売却益」「固定資産売却損」の勘定科目になります。
次からは、具体的に貸借対照表を使いながら仕訳を解説していきます。
直接法の仕訳では、固定資産から減価償却を直接差し引く方法です。
例えば、以下の条件で仕訳をしてみます。
- 車購入時の価格(帳簿価額):3,000,000円…①
- 減価償却累計額:2,000,000円…②
- 売却時の車の価値(帳簿価額):1,000,000円…①-②
- 売却価額:1,200,000…③
*今回はリサイクル預託金は含まずに計算します。
現預金:1,200,000円(売却時に入った金額)…②
合計:1,200,000円貸方
車両運搬具:1,000,000円(車を売却した段階の資産価値)…①-②
固定資産売却益:200,000円(売却した時の利益)…③-①+②
合計:1,200,000円
帳簿上の車の価格よりも売却した金額が高ければ、貸方に「固定資産売却益」を計上し、低ければ借方に「固定資産売却損」を計上します。
このように、直接法は現在の資産価値から仕訳をする方法なので、実際の状況を把握しやすいやり方となっています。
間接法は固定資産を直接減らすのではなく、減価償却累計額を計上し、これまでの償却額の合計を表示する方法です。
例えば、以下の条件で仕訳をしてみます。
- 車購入時の価格(帳簿価額):3,000,000円…①
- 減価償却累計額:2,000,000円…②
- 売却時の車の価値(帳簿価額):1,000,000円…①-②
- 売却価額:1,200,000円…③
*今回はリサイクル預託金は含まずに計算します
現預金:1,200,000円(売却時に入った金額)…③
減価償却累計額:2,000,000円(損金として今までに償却した金額)…②
合計:3,200,000円貸方
車両運搬具:3,000,000円(購入時の資産価値)…①
固定資産売却益:200,000円(売却した時の利益)…③-①+②
合計:3,200,000円
直接法と間接法はどちらを選んだとしても資産や経費の金額が変わりません。
しかし、以前から会社で行っている計上方法での実施が基本になりますので、それに合わせることが必要です。
もし初めて行う時には、会社の方針として分かりやすい方法を選ぶと良いでしょう。