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車を買取業者に売却すると売買の手続きにおいて色々な書類が必要ですが、委任状もその一つだとされています。
そもそも、委任状というのがどのような書類かよく分からないという方も多く、あまり馴染みのないものだと思います。
この記事では、委任状についての説明や取得の方法、書き方などを解説していきます。
また、委任状は車の売却以外にも車に関する手続きを行う際に必要となる場合があります。どのようなケースで必要になるかについても見ていきましょう。
委任状とは?
売買契約など法律に関することや自治体の役所で取り扱う公的な手続きは、権利者である当人の意思により行わなければなりません。しかし、当人が直接手続きできない場合は、特別に当人が依頼した「別の人」に手続きを任せることが可能です。この手続きを頼まれた方を代理人と言います。
ただし、代理人が確かに本人から依頼されて法的手続きを行うことが、第三者に明白であることが必要です。そうでなければ、本人に無断で法律行為を行えることになってしまい、本人の権利が脅かされてしまいます。
例えば、本人とは他人である人物が書類を偽造して、本人の知らないところで無断で土地を売ってしまうというようなケースです。
本人の権利や財産を守るためにも代理人が本人から手続きを依頼された場合、それを証明するための書類として「委任状」があります。
委任状には依頼した本人の署名や捺印が必要となります。
車の売却を他の人に依頼する際は委任状が必要
車の売却の手続きを代理人に依頼する場合も、確かに売り主の意思で代理人に頼んだことを証明するための委任状が必要です。
車を売却する際は、所有者を次の車の購入者に変更しなければなりません。この所有者の変更を「名義変更」と呼びます。
名義変更の手続きは複数の書類が必要で、管轄の陸運局へ出向いて手続きしなければならず、手間も時間も要します。
車の売却で買取業者を利用する場合、名義変更の手続きを自分の代わりに業者に依頼することも可能です。業者が代理人となって、自身の車の名義変更を行うので委任状が必要となります。
また、ディーラーで新しく車を購入して乗り換え、前の車を下取りに出す場合もあるでしょう。その際もディーラーが所有者に代わって名義変更の手続きを行うため、同様に委任状が必要となります。
買取業者に名義変更を依頼する場合、委任状が必要です。
あまり一般的に馴染みのない書類なので、どうやって準備すればよいか分からない方もいるでしょう。
ほとんどの場合、委任状は中古車買取業者のほうで準備してくれます。売り主は用意された委任状の必要箇所に記入、押印するだけです。
実は、委任状の形式は基本的には決められていません。そのため、委任状の内容として必要な事項さえ記載してあればどのような形式でも良いとされています。
ネットでも委任状のひな形などが探せます。国土交通省のホームページにアクセスすれば無料でダウンロードできるので効率的であり、公的な形式なので安心です。印刷して利用してみましょう。
形式に関しては特に取り決めがない委任状ですが、記載が必要な項目が5つあるので見ていきます。
受任者というのは、陸運局に出向いて手続きを行う者のことです。ここでは車買取業者やディーラーなどが当てはまります。買取業者が委任状を準備してくれる場合、受任者の欄は空白になっていることもあります。車の所有者は委任者なので、間違えて自分の氏名や住所を記載しないようにしましょう。
ほとんどの委任状では受任者の氏名と住所の記載箇所の下に、何を委任するかという申請の手続きを記載する箇所があります。今回は車の売却による名義変更なので「移転登録」と記載しましょう。
申請する種類の記載箇所の下に、登録番号や車台番号を記載する箇所もあります。登録番号は車のナンバーのことです。車台番号は製造番号のことで、エンジンルーム内の骨格部分に刻印があります。車検証にも記載されているので、確認して間違えないように記載してください。
委任者というのは名義変更を代理人に依頼した人物のことです。ここでは買取業者に依頼した車の売り手ということになります。委任者本人が記載し、実印を押印します。
委任者の記載欄の横に、さらにもう一つ委任者の記載欄があります。ここは委任者がさらに委任する場合に記載されます。
例えば、買取業者がさらに行政書士などに手続きを依頼する場合です。通常、車の所有者には関係ない箇所なので空欄のままにしておきましょう。
委任状には実印を押印しますが、この実印が確かに委任者本人のものであることを証明する必要があります。そのためには「印鑑登録証明書」を取得しなければなりません。
印鑑登録証明書の発行は、市町村の役所の窓口で手続きできます。
ただし、始めに実印の印鑑登録が必要です。印鑑登録できる実印は8㎜以上25㎜以下の印鑑で、名前のみもしくは姓のみ、もしくは姓名のいずれかの印鑑という条件があります。
印鑑登録されたら自分の住民登録と印鑑がセットになります。
より信用度が高い印鑑と言えるため、他の人が偽造しづらくなるので車の名義変更という重要な手続きでは必要とされるのです。
委任状には捨印を押さなければなりません。
捨印とは、委任者が押印した実印を委任状の空欄に再度押印することです。これは委任状の記載にもし誤りがあった場合、その内容を正す訂正印として用いることができるためです。ただし、訂正できるのは委任者の氏名と住所の誤りのみなので注意しましょう。
例えば、車の車台番号や申請内容などが間違っている場合だと、捨印では訂正できません。その場合は始めから書き直しになってしまい、余分な労力や時間がかかります。
委任状に記載するのはごく基本的なことですが、間違えないように慎重に行ってください。
車の名義変更で「実印」「印鑑登録証明書」「委任状」が必要なのは普通車の場合です。軽自動車の場合はこれら全てが不要となります。
軽自動車の名義変更は、委任状の代わりに「申請依頼書」という書類を用います。
申請依頼書は軽自動車協会のホームページにアクセスすればダウンロードできるので、印刷して使いましょう。
申請依頼書では代理人の氏名や住所を記載し、申請する手続きの種類を選んで丸を書きます。車両番号や車台番号、使用者や所有者の氏名や住所などを記載する欄があるので、順に記入します。
印鑑も実印ではなく認印で済むなど、普通車に比べると手続きが簡単にできるようになっています。
委任状があれば他人名義の車も売却できる
自分名義の車だけではなく、例えば家族や友人の車など他人名義の車を売却するというケースもあるでしょう。
通常、他人名義の車は売却できないことになっていますが、本人が売却できないよ特別な事情がある場合は、本人に代わり売却することが可能とされています。
例えば、車の名義人が既に亡くなってしまっている場合、病気などで判断能力が欠如している場合、海外にいて物理的に売却手続きができない場合などが当てはまります。
親族や知人などが健在で、車は不要となり自分が本人に代わって車を売却することもあるかもしれません。その際は、必要な書類を揃えればスムーズに買取業者に売却が可能です。もちろん委任状には売却を依頼する親族や知人の署名や実印は必要となります。
ただし、車の名義人が亡くなっている状態で、本人に代わって車を売却する際は手続きがやや複雑になるので注意しましょう。
まず、代理人として手続きする相続人に移転登録(名義変更)しなければなりません。
名義人が亡くなると戸籍から除籍となります。名義人の死亡を証明するためと手続きする方と名義人の血縁関係を証明するために戸籍謄本が必要になります。
さらに、相続人全員の印鑑登録証明、相続の際の作成した遺産分割協議書、委任状や譲渡証明書などを準備しなければなりません。相続人が多いとその分時間や労力がかかります。
車の名義人が認知症の場合は、正常な判断能力が不十分です。そのため、正当な代理人を立てるのも難しいと判断されるので、委任状は意味をなしません。
車の売却を行うためには成年後見人を立てなければならず、家庭裁判所に申し立てをする手続きが必要です。
役所の窓口で申請書類がもらえるので、まずは相談してみましょう。
医師の診断書の取得や必要な書類の準備、家庭裁判所への申し立て、審理の開始、親族への意向照会などが行われます。
多くの手順を踏んで慎重に審判がなされます。そのため、医療機関や役所の福祉関係窓口など協力してもらって手続きを進めることになります。
すぐには成年後見人を立てることはできないため、数ヶ月程度は必要です。
成年後見人が選定されると、必要だと認められれば本人の代理として車の売却もできることになります。
車の名義人が海外に滞在していて、帰国できずに国内の親族などに車の売却を依頼することもあるでしょう。
普通車の場合、売却には印鑑証明書が必要です。もし日本国内に住民票がない場合は、印鑑証明書の取得ができません。
海外に滞在している名義人は、現地の日本総領事館もしくは日本大使館へ出向いて「署名証書」を発行してもらいます。
署名証書の発行には、パスポートや現地の住所地を証明する書類が必要です。この署名証書が印鑑証明書の代わりになるので、日本にいる代理人へ郵送します。
代理人は、受け取った署名証書を名義人が海外赴任する直前の居住地の役所へ持っていきます。そして「住民票の除票」を取得するという手続きが必要です。
住民票の除票とは、名義人が海外へ転出したことを証明する書類となります。
軽自動車の場合は印鑑証明書が不要なので、署名証書も住民票の除票も取得の必要はありません。また、名義人が海外にいても住民票が残っていれば通常の売却手続きが可能です。
他人名義の車を売却する際の委任状の注意点
他人名義の車を売却する際に委任状を作成しますが、委任者の記載欄に注意が必要です。
委任者というのは車の所有者のことです。売却を依頼された代理人が記載することはできません。委任状は委任者が記載しなければならないので、注意しましょう。
また、車の所有者の実印も必要となります。
代理人が車の売却を行う際は色々と事前の準備が必要なので、あらかじめ委任状を準備して作成しておくのがおすすめです。
持参したものに不備があった場合は、作成し直しなど余計な手間がかかってしまいます。
他人名義の車を売却する際は、車の所有者の「委任状」「譲渡証明書」「印鑑証明書」が必要となるので確認しておきましょう。また、代理人は自分の「印鑑」「運転免許証などの本人確認書類」が必要となります。
売却以外にも委任状が必要なケース
車の売却以外にも委任状が必要となる車に関する手続きがあります。
それは、新車を購入した時に行う「車両登録」です。車は登録してナンバープレートを交付し、取り付けなければ公道を走行することができないと法律でも決められています。
その他にも、車を改造して仕様を変えた場合に行う「構造変更」の際も当てはまります。仕様を変更しても安全性が確保されていることが認められないと、公道を走行できません。そのための届け出が必要となるのです。
また、車を廃車にするために行う「抹消登録手続き」でも委任状が必要となります。
新車を購入した際に、車両登録の手続きが必要です。
車両を登録することで所有者の所有権が証明されるので、所有権が守られます。また、ナンバープレートを交付することで1台1台の車を識別できるため、国や自治体は車の保有を把握することが可能となります。
車の登録、届け出をしないとナンバープレートが交付されず、公道を走行することができません。
登録手続きで交付されたナンバープレートは、必ず車の前と後ろに取り付けます。車の購入者の元に納車される際は、既にナンバープレートが付けられた状態であるのが一般的です。
自分で車両登録の手続きするという方は少ないでしょう。主に車を販売するディーラーなどが所有者の代理人として手続きを代行してくれています。その際に委任状が必要となります。
車はある程度自由にカスタマイズすることが可能です。
改造すると車のサイズ、重量、排気量などが変更になることがあるでしょう。その場合は「構造変更」という手続きをしなければ公道は走行できないと法律で決まっています。
また、車検に関しての取り決めもあります。構造変更の手続きをすると車検の有効期限がまだ残っていても無効になり、車検を改めて受けなければなりません。
カスタマイズした車が、車検の際に車が安全に走行できるかの基準となる保安基準を満たしているかを再度チェックしなければならないからです。
構造変更の手続きは、改造を依頼した業者に代行してもらうことが多いです。その際に委任状が必要となります。
車を廃車にする際、登録を削除するための手続きである抹消登録が必要です。抹消登録には「永久抹消登録」と「一時抹消登録」があります。
永久抹消登録とは、永久的に車の登録を削除する手続きで、車を解体して廃車処理し、今後一切使わない時に行います。
一時抹消登録とは、車はありますが一時的に使用を中止するための手続きです。
抹消登録した車は公道を走行することはできません。
永久抹消登録は、廃車処理のために車を業者に引き渡す際、業者に手続きを代行してもらうというケースが多いでしょう。
また、一時抹消登録も海外へ赴任する際に車は残して登録だけ一時的に抹消したいというケースで行われます。
その際に車の保管や抹消手続きを業者に依頼することがあります。業者を含め車の名義人以外の方が抹消登録手続きする際は、名義人が手続きを依頼したことを証明する委任状が必要となります。
委任状が悪用されることはない
委任状の形式や記載内容を見ると、車の名義人の住所や氏名などの個人情報が記載されています。さら印鑑登録してある実印を押印するということで、個人情報の流失や悪用などを心配される方もいるでしょう。
しかし、申請の種類を移転登録(名義変更)に限定しており、委任状にもきちんと記載しています。そのため、作成した委任状は移転登録にしか使うことができません。
署名や実印の押印も車の所有者本人が直接行います。
例えば、業者が実印を預かって使う、所有者の代わりに記載するということもありません。実印や捨印を押印しても他に契約などに使うことは不可能なので、悪用される心配はないと言えます。