車を売却した後、代金が振り込まれる前に業者から「売却代金を減額したい」という連絡がくる可能性があります。
それは、引き渡した車を整備して、部品などを細かくチェックしたら不具合が見つかったなどの理由が多いです。
そこで、この記事では車の売却後に売却価格を減額交渉される原因について詳しく解説していきます。また、契約を結んでから減額交渉された場合の対処方法も紹介するので参考にしてください。
車買取業者によっては減額交渉されることはある
車の買取業者を探す段階で、まずは査定を受けます。その査定額に同意すると売買契約が成立します。しかし、その後に車が再査定されて査定額が変わってしまうという可能性もゼロではありません。
始めの査定で割と高い査定額が出ても、その後の査定で車に不備が見つかったなどの理由で減額を言い渡されてしまうということです。
そのため、どのような理由で減額となるのか、その原因をまずは知っておく必要があります。
減額交渉は車引き渡し後が多い
車を買い取ってもらうときの一般的な流れは以下になります。
- 査定を受けて買取業者を選ぶ
- 売買契約を結ぶ
- 後日、車の引き渡しを行う
- 後日、売却代金を受け取る
査定額の減額の連絡が来るタイミングは、車を引き渡してから代金の入金手続きが行われる間が多いです。
買取業者はまず車を引き取った後で、一般的に再販に向けて車に不具合がないかを細かく調べてメンテナンスを行います。その整備中に車にトラブルがあることを発見するというのが主な理由とされています。
再販するためにメンテナンスに費用がかかると、その分を査定額から差し引かないと業者側が損することになるため、減額交渉をします。
ここからは、どのような理由で減額となるのか、その減額対象の車について4つご紹介します。
査定額が減額となる対象として挙げられるのは、ボディの傷や凹みです。
査定時にもボディを入念にチェックして、傷や凹みの有無も調べますが、車を整備する際に査定時に見落としていた傷や凹みが発見される場合があります。
外からほとんど目立たないものだと、さほど大きな減額にはならないかもしれません。
また、車内のシートや天井などの汚れやほつれなどが後から見つかることも考えられるでしょう。
他にも査定時に気づくとは思いますが、タバコやペットの臭いなども取れにくいので減額請求される理由になることもあり得ます。
買取業者に車を引き渡した後、自社工場もしくは提携工場で整備士によるメンテナンスが行われることが多いです。
その際に、エンジンやトランスミッション、ブレーキなどの車を走行させるために必要な部品が故障していないか、劣化具合などを専用機器を使ってチェックします。
査定時にもボンネットを開けてある程度確認しますが、内部の細かな機能まで見るのは不可能です。
メンテナンスの過程で、こういった車の基幹系のトラブルが見つかり、減額対象となってしまうことがあります。
修復歴とは、交通事故もしくはその他の災害により車の「骨格部分」の修正や交換をした経緯があるということです。
事故で車が破損し、修理したからといって全て修復歴がつくわけではありません。骨格部分はフレームのことで、車の強度を保つ部分にあたります。
そのため、車の外側にあたるフェンダーやドアを修理した程度では修復歴にはあたりません。
日本自動車検査協会で規定されている車の骨格部分は、以下になります。
- 車の前部のフレーム、フロントクロスメンバー、フロントインサイドパネル、ダッシュパネル、ラジエターコアサポート
- ドアの外枠にあたるピラー
- 屋根部分のルーフパネル
- シートの下部分のルームフロアパネル
- 後部のトランクフロアパネル
査定時に修復歴があるかプロの査定士が注意深く見ていますが、見落とす可能性もあるでしょう。
査定時には気づかなかった修復歴をメンテナンスにより発見されると減額請求の対象となる場合が多いです。
大雨や台風などの自然災害が起こり、車が水に浸かってしまうトラブルがあります。
エンジン部分まで水に浸かると電気系統がショートして、エンジンがかからなくなる場合もあるでしょう。
一度、車が水に浸かってしまうと、修理して動くようになってもいつか大きな故障を起こすリスクが高まります。
こういった水没車は、水が引いても跡が残ってしまうので査定時に判明することが多いですが、見落とされる可能性もあります。
日本自動車協会が規定している水没車としての査定基準がありますので、参考にしてください。
- フロア部分までの浸水…減点3割
- クッション部分までの浸水…減点4割
- ダッシュパネルまで浸水してしまった場合…減点6割
減額交渉が起きる要因
査定額が決定し、売買契約が成立して車を引き渡したのに、後になって減額請求がなされる原因はいくつか考えられます。
例えば、査定時に修復歴があることや、車に傷があることを伝えていなかったことが挙げられます。
査定員は車を見ることに関して確かな目を持っていますが、やはり人間なので見落としがあったということもあるでしょう。
また、始めから減額交渉ありきの業者もいるので注意が必要です。
後から査定額の減額を請求されるのは、査定時に車の修復歴があることや車内でタバコを吸っていた事実などを業者側に伝えていなかったことが考えられます。
査定時に業者が質問してこない場合もありますが、逆に少しでも高く売るためには、修復歴は敢えて伝えないという方もいるかもしれません。
しかし、水没車や修復歴に関しては、黙っていても車を引き渡した後に整備の段階でほぼ分かってしまうものです。そうなると後から査定額の減額を求められてしまいます。
また、事故歴を聞かれて「ない」と答えたのに雪害による車の修復歴が見つかり、減額請求されたという例もあります。
修復歴は交通事故だけとは限らないので、1度でも車を修理した経験があれば正直に伝えておいたほうが良いでしょう。
車買取業者の査定員は確かな目を持ち、経験を積んだ査定のプロです。
しかし、査定のプロであっても査定時に車の不具合に気づかないというケースも考えられます。
また、車を隅々まで見たのに見えにくい部分の傷、凹みを見落としてしまったというケースや、車を引き渡し後のメンテナンスの段階で発見され、査定額を減額させて欲しいと連絡がくるというケースもあります。
こういった業者側の見落としによる減額に関しては、応じるかどうか慎重に対応したほうが良いでしょう。
買取業者の中には、査定時に他の業者よりもかなり高い査定額を提示する業者もいます。
高額査定に喜び、売買契約が成立して車を引き渡した後で、「不具合が見つかったので減額する」という連絡がくることもあります。
これは、買取業者が始めから車引き渡し後に減額することを前提として、わざと高めに査定額を提示して契約を取り付けようとしているからです。
こういった悪徳業者に騙されないよう、業者を選ぶ際は十分に注意が必要です。
減額交渉の対処方法
もし車を引き渡し後に買取業者が査定額の減額請求をしてきたら、きちんと対応することが大事です。
相手の言いなりにはならずに、まずは減額となった原因や理由についてしっかり説明を受けてください。そして、減額となる原因に関しての責任の所在を明らかにすることが大事です。
解決が難しそうならば、専門機関に相談することも考えましょう。
また、どうしても納得できない場合は、契約のキャンセルも検討しなければなりません。
自分が損することがないように諦めずに解決の手段を探りましょう。
査定額を減額したいという連絡があったら、まずは買取業者と会って減額の原因をきちんと説明してもらいましょう。
納得できるまで、詳しく話を聞くことが大事です。
原因が買取業者側の見落としの場合もあります。買取業者もお客様からの信用が大事なので、自分たちのミスならば強引に減額請求を推し進める可能性も低いと考えられます。
業者側のミスならば、その場で指摘して減額しないように交渉しても良いかもしれません。
また、減額理由に納得がいかなければ実際に車を見せてもらい、自分の目で確認することも大事です。減額対象となる不具合が事実ならば、業者側も素直に応じてくれるでしょう。
その際は、車の詳しい方に一緒にいてもらうとより効果的です。
減額請求された場合、減額の原因となる部分の責任が業者側なのか、売り主側なのか、どちらにあるかを明確にすることも大事です。
査定時に買取業者が見落とした場合もありますが、売り主が査定員から聞かれたことに対して正直に話さない場合も考えられます。その際に「瑕疵担保責任」の有無が重要になってきます。
瑕疵担保責任とは、車に隠れた欠陥(不具合など)があって、後から発覚した際に負う責任のことです。
査定時に正直に修復歴や水没車である旨を伝えていれば、プロの査定士も車の不具合を想定して査定しているはずなので、売り主が瑕疵担保責任に問われる可能性は低いです。
もし売り主が瑕疵担保責任に問われるとするならば、車の不具合に対する修理費を負担する、査定額の減額に応じる、場合によっては契約を解消して解約料を支払うといった責任を負うことになるでしょう。
車の不具合などが理由で売買契約後に査定額を減額したいと言われたら、最終的に契約をキャンセルして車を返却してもらうのも1つの対処法です。
車買取業者は1つではないので、他の買取業者を探して再度買い取ってもらうこともできます。
ただし、注意したいのが契約取り消しに伴う「キャンセル料」の発生です。
キャンセル可能期間やキャンセル料については、業者によって対応が異なります。契約書に記載されているはずなので、減額交渉のリスクも想定し、きちんと確認しておく必要があります。
査定額が大きく減額されることになり、キャンセル料が発生しないならキャンセルしてしまうのも得策だと言えるでしょう。
売り主と買取業者の間で話し合いをしていても、折り合いがつかずに解決が難しい場合もあります。
そんな時は「独立行政法人国民生活センター」へ相談してみましょう。消費生活全般のトラブルに関する相談を受け付けている機関であり、車の査定額の減額に関するトラブルの相談にものってもらえます。
相談員はトラブル対処のプロなので、買取業者への対応の仕方などを教えてくれます。
減額されないための対策
車の売買契約後に、再査定による減額交渉を防ぐためには事前に対策を立てておく必要があります。
まず重要なのが、信頼できる業者を選ぶということです。複数の業者をピックアップし、査定額や口コミによる評判、JADRI加盟店かどうかなどを参考にして慎重に選びましょう。
また、査定は複数で立ち会うこと、事前に契約成立後の減額の有無についてもきちんと確認しておくことが大事です。
車を売却する際は、始めから1社の買取業者に決めるのではなく、複数の買取業者に査定を依頼し、査定額を比較したほうが良いでしょう。
会社の規模や買取実績などの情報も選ぶ際の判断材料となります。また、ネットの口コミなどで業者の評判を調べてみるのもおすすめです。
いくら会社の規模が大きくて高額査定を打ち出す業者であっても、減額交渉してくるケースが多いとどうしても信用しきれないものです。査定額だけで決めるのではなく、評判も参考にして慎重に選んでください。
信用できる買取業者かどうかは、JADRI加盟店かどうかも1つの目安となります。
JADRIとは、日本自動車流通研究所のことであり、中古車買取業界の健全化を目指すために設立された団体です。加盟するには厳しい審査基準があります。
例えば、会社設立から5年以上の経営実績を有する、直近5年でトラブルを起こしていないなどが加盟条件とされています。
そのため、こういった基準をクリアした加盟店は健全な経営をしていることの証明にもなり、信用度が高いとも言えるでしょう。
再査定による減額交渉や、高額なキャンセル料の請求を禁止していることでも有名です。
車の査定を受ける際は、1人ではなくできれば家族や友人などに頼んで一緒に立ち会ってもらうことをおすすすめします。
査定員と一対一では、何かトラブルが起きた時の証明が難しくなり、言った言わないで揉める可能性も出てきます。
また、どのように査定していたかも証言する人が多いと有利になるでしょう。
中には強引に売却を迫ってくる業者もいるので、複数人だと業者側も強気には出られなくなるので安心です。
車の修復歴などがあれば、正直に全て伝えておくことは減額トラブルを防ぐ対策となります。
部品交換や不具合、傷や凹みなどがあればその旨も伝えておきましょう。
査定にはマイナス要素になってしまうことであっても、後で判明して減額されてしまうので同じことです。後から減額請求されると印象が悪い上に揉める原因にもなるので、隠そうとしないほうが賢明です。
査定時に車の状態について正直に話しておけば、後で減額請求されても業者側の見落としを主張しやすくなるとも言えます。
車買取業者を選ぶ際に、査定を受けて査定額が決まった後で減額請求があるかどうかを、まずはきちんと確認しておきましょう。
また、キャンセル可能な期間やキャンセル料の支払いの有無なども尋ねておくと安心です。
買取業者の中には、いかなる場合でも契約後は減額請求しない、キャンセルは車引き渡し日から7日間可能という書類を提示してくれる所もあります。
キャンセルする際は、面倒な手続きもなく電話1本でも可能という業者もあります。
車の売買契約を結ぶ際は、買取業者との間で売買契約書を必ず交わします。契約書の中には、様々な取り決めなどが記載されています。
一般的に査定後の減額についても書かれていることが多いです。
契約書は内容が細かいため、但し書きなどはさっと目を通す程度で終わらせてしまうこともあるでしょう。しかし、それでは後悔することにもなりかねません。
査定後の減額はどのような取り決めがなされているのか、署名や捺印をする前にきちんとチェックしておきましょう。
減額となるケースは具体的にどのような不具合が原因でなるか、など疑問に思ったことは契約前に質問して解消しておくことが大事です。
減額交渉されてもきちんと対処して損をしないようにしよう!
車引き渡し後に減額請求されないように、まずはしっかり対策を立てておく必要があります。
しかし、それでも予想外に減額請求の連絡が来ることもあり得ます。その場合は、すぐに応じないで、まずは減額の理由を聞いて納得するまで交渉することが大事です。
応じてしまって後から「やはりキャンセルしたい…」と思っても、なかなか難しいものです。
解決しない場合はためらわずに専門機関へ相談しましょう。