車を売却する際、どうしても提示された査定額だけに注目してしまうかもしれませんが、自賠責保険料についてはどうなっているのかも確認する必要があります。
自賠責保険料は、車検を行う時に整備費と一緒に請求されることが多いです。この自賠責保険について詳細を知っておけば、売却する時に役立つこともあります。
この記事は、自賠責保険の内容や還付されるケース、手続き方法について詳しく解説していきます。
自賠責保険とは?
自賠責保険とは、交通事故被害者に対して救済をする目的で「自動車存在賠償保障法」の法律に基づき、車の所有者全てに加入が義務付けられています。別名「強制保険」ともいいます。
自賠責保険は、保険会社や代理店から加入することが可能です。金額についても一律で、保険会社による違いはありません。
保険料は「損害保険料率算出機構」によって決められており、車種や保管加入期間、地域によって金額が定められています。
前年に引き続き、令和3年4月1日から適用の自賠責保険料は、値下げされています。理由として、自動ブレーキ等の技術が向上したことにより、交通事故件数が減少傾向になっているからです。
自賠責保険の特徴は、事故が起こった際に被害者保護をメインとしている保険ということが挙げられます。そのため、自動車を運転している時に発生した「人身事故」のみが補償対象となります。
保証される金額は、被害者の死亡時に3,000万円、後遺障害時に4,000万円、傷害時には120万円が上限です。したがって、それ以上の補償が求められる時には、任意保険で賄うことが一般的となっています。
自賠責保険は最低限の保証しかありませんので、もし大きな事故を起こしてしまった時には全てを補填することは難しくなります。そのため、任意保険の加入が必要です。
任意保険は加入者の任意であるため、車を乗り換える際には、自分で車両入替手続きを行ったり、車を手放す時は解約手続きをしたりする必要があります。
自賠責保険に加入せずに車を運転することは「自動車損害賠償保障法」に違反し、違反点数6点、1年以下の懲役または500,000円以下の罰金が科せられます。違反点数6点であると、少なくとも30日間の免許停止になります。
気が付かずに自賠責保険の有効期限が切れた状態で公道を走行してしまうこともあるかもしれません。そういった場合は、大抵車検も切れた状態で走行しているケースが多いので気をつけましょう。
また、自賠責保険に加入せずに車検を通すことはできないので、結果的に公道を走行できない状態です。そのため、自賠責保険は車検と同時に更新するのが一般的です。車検は2年ごとに行う必要があるので、自賠責保険も車検の際に24ヶ月分に加入します。
さらに、任意保険の加入も自賠責保険が加入されている前提で登録されるので、自賠責保険が未加入の場合は任意保険の登録ができず、リスクを伴います。
車を売却する時に自賠責保険は還付されるのか?
自賠責保険の保険料は、車検ごとに2年分の料金を一括で支払います。
もし自賠責保険の加入期間が残っていて車を売却する場合、自賠責保険料が還付されるのか気になる方もいるでしょう。
結論からいえば、ケースバイケースです。それは買取業者が行う自賠責保険料の返金額の基準が決まっているからです。
この返金額の基準を知っておくことで車の売却にも役立てられます。
これから、自賠責保険の還付について詳しく解説していきます。
自賠責保険料の返金額の算出には、日本自動車査定協会(JAAI)が基準を定めています。
残存の契約期間に応じて設定された点数で返金額が決定する仕組みです。そして、普通乗用車と軽自動車では設定された点数も異なってきます。
ただし、普通乗用車と軽自動車どちらの場合においても、契約期間が2ヶ月を切っている時は点数は0点になり返金額はありません。
例を挙げれば、契約期間が3〜4ヶ月残っていれば点数は1点、5ヶ月で2点、6ヶ月だと3点のように基準が決まっています。
また、点数の基準は新車購入して車検が3年あるケースと、車検期間が2年のケースでは点数に変動がありますので、知っておくことが大切です。
点数における加算額は1点あたり1,000円です。
具体的に例を挙げると、自賠責保険の残り月数が9ヶ月の時であれば、普通乗用車や軽自動車も同様に点数が5点になりますので、5,000円が買取額に上乗せされて返金されることになります。
基本的に再販売が目的の買取業者であれば、自賠責保険料の還付ではなく、点数に応じた返金分を査定額に反映させることになります。
自賠責保険料の還付を受けられるケースというのは、廃車処理を行う場合です。その際は、運輸支局での廃車手続きを行った後で保険会社に手続きをすることで、還付金(解約返戻金)を受け取ることができます。
車の売却時期が自賠責保険の更新時期であったり、保険期間が2ヶ月以下だったりする場合、余剰分に関しては戻ってくることはありません。
つまり、保険期間が3ヶ月以上残っている時に還付される額が買取価格に上乗せされるということです。
以下は、JAAIが定めている自賠責保険料の点数を記載しておきます。
※普通自動車の場合
- 残月数0~2ヶ月・・・0点
- 残月数3~4ヶ月・・・1点
- 残月数5ヶ月・・・・2点
- 残月数6~7ヶ月・・・3点
- 残月数8ヶ月・・・4点
- 残月数9~10ヶ月・・・5点
- 残月数11ヶ月・・・6点
- 残月数12~13ヶ月・・・7点
- 残月数14ヶ月・・・8点
- 残月数15ヶ月・・・9点
- 残月数16~17ヶ月・・・10点
- 残月数18ヶ月・・・11点
- 残月数19~20ヶ月・・・12点
- 残月数21ヶ月・・・13点
- 残月数22~23ヶ月・・・14点
- 残月数24ヶ月・・・15点
自賠責保険「ケース別」手続き方法
自賠責保険は新車購入する際の諸費用の一部であったり、車検の更新時に費用として支払っていたりすることが多いので、あまり手続きについて考えることは少ないかもしれません。
しかし、車を売却する時や廃車する時などによって自賠責保険の手続き方法は変わってきます。
手続き方法が変わるケースとしては以下の5つが挙げられます。
- 車を買取業者に売却するとき
- 廃車にするとき
- 車の乗り換えをするとき
- リース車を売却するとき
- 個人売買をするとき
ここからは、この5つのケース別に自賠責保険の手続きの方法を詳しくお伝えしていきます。
買取業者は一般的に自賠責保険の残り月数があれば、解約せずにそのまま車の買い取りを行います。その際には、残り月数分の自賠責保険の点数に応じて、買取価格に上乗せした状態で査定額が算出されることが多いです。
有効期限が残っている自賠責保険は、車の売却時に一度買取業者の名義に変更され、再販売が行われる段階で新しい所有者名義に変更して引き継ぐことになります。
買取業者としては、再販売の際に車検や自賠責保険が長期間残っている状況であればアピールポイントにもなるため、解約手続きを行わないことが一般的です。
手続きに関しては買取業者が全て行うので、任せて問題ありません。ただし、買取業者でも再販売するか廃車にするかによって自賠責保険の取り扱いが異なるので、確認しておくとよいでしょう。
自賠責保険の手続きが異なるケースが、廃車をする時です。
自賠責保険は車にかかる保険ですので、廃車になれば保険も引き継がれず、解約することになります。
廃車のイメージとして車を解体処理することが浮かぶかもしれませんが、一時抹消登録をして一時的にナンバープレートを外し、公道を走行できなくする際にも適用されます。
海外に車を輸出する場合も、日本の自賠責保険は適用外になることから、廃車と同様に自賠責保険は必要ありません。
その際、自賠責保険の有効期限が1ヶ月以上残っている時は、還付金として戻ってきます。
廃車買取業者はその点を熟知して行っているので、廃車処理の際に還付についての申請を代行して行ってくれる業者がほとんどです。
廃車の際に有効期限が残っていれば、自賠責保険の他にも自動車税や自動車重量税の還付を受け取れますので、確認しておきましょう。
新しい車に乗り換える際は、新たに自賠責保険に加入することが必要になります。
自賠責保険は車にかかる保険ですので、以前加入していたものを引き継いで利用することはできません。そのため、新車購入や中古車購入であっても、一般的に自賠責保険の加入手続きを再度行います。
また、中古車を購入し、自賠責保険の保険期間が残っている場合は、販売店の名義になっているため名義変更手続きが必要です。
通常、車検が残っている状態であれば、自賠責保険の有効期限も残っていることになります。車検証と自賠責保険の名義変更を行えば、残っている自賠責保険も利用することが可能になります。
リース会社が名義人になっている車を売却する時には、気をつけるべきことがあります。
まずその車を「中途解約」しなければなりません。しかし、中途解約ができるかどうかはリース契約の状況によって異なります。その上、中途解約の場合は解約手数料も支払う必要がありますので、売却できたとしても損をする可能性もあります。
その問題をクリアし中途解約を行えば、通常の中古車を売却するのと同様に手続きをすることができます。
自賠責保険をリース会社で支払っている契約であれば、リース会社から名義変更の手続きを行ってもらえます。中途解約の際に名義変更をしたいことを伝えれば、リース会社側で手続きをしてもらえます。その後は買取店に売却する時と同じように手続をすることが可能です。
リース会社によっては、契約満了後にリース車の買い取りが可能な業者もありますので、契約内容を確認して行うことでスムーズに実施できるでしょう。
個人売買の際は、代行手続きを行ってくれる業者がいるわけではないので、個人で手続きをすることになります。
自賠責保険は車に対しての保険になりますので、書類を保険会社から取り寄せて、手続きを行うことになります。
書類に譲渡人・譲受人の署名捺印を行い、保険会社に提出します。また、保険会社によっては、譲渡の意思確認をする書面や印鑑登録証明書、身分証明書が必要になる場合もありますので注意しましょう。
手続きが不安であれば、保険会社が代行することも可能です。また、個人売買が初めての方であれば、保険会社に確認しながら進めると安心でしょう。
個人売買は手続きに慣れていないと、当事者同士で先々トラブルに発展する可能性があります。売却するにあたり、各種手続きについて、しっかり確認した上で行うことをおすすめします。
自賠責保険の還付手続きに必要な書類
自賠責保険の還付を受けるためには、廃車処理が必要となります。廃車処理を実施した上で、前払いをした保険料の還付金を受け取れます。
還付手続きの前に、陸運支局や軽自動車検査協会で手続きを行わなければなりません。
廃車処理をした後、自賠責保険の還付手続きに必要な書類は以下の通りです。
- 一時抹消登録証明書または永久抹消登録証明書
- 自賠責保険の原本
- 所有者の印鑑
- 振込先の口座情報
還付金の手続きが完了すると、1〜2ヶ月で所有者の振込先の口座に還付されます。
自動的に還付されるわけでないので、廃車にした際は還付手続きを行いましょう。それに加えて、自動車税や自動車重量税の有効期限が残っている時も同様に還付が受けられます。忘れずに、陸運支局で手続きをしてください。
自賠責保険に加入できる期間
基本的に車検を通したり売却したりする際は買取業者が代行するため、自分で自賠責保険の手続きするケースは少ないでしょう。
しかし、自分の車の査定金額や内訳がどのようになっているか、正確に把握したいという方もいるかもしれません。
任意保険と違い、強制保険と呼ばれる自賠責保険は、車の諸経費に含まれることが多いです。そのため、内容を深く理解する機会が少ないです。
自賠責保険の仕組みを理解しておくことで、売却の際に役に立つかもしれません。
ここからは、自賠責保険の加入期間について詳細をお伝えしていきます。
自賠責保険の加入については、1ヶ月ごとに加入することが可能です。
保険料は、沖縄県や離島を除いて一律の金額となっています。例えば、普通自動車の1ヶ月は5,860円で軽自動車は5,840円です。
車検を受けるには自賠責保険の加入は必須条件になりますので、車検のときにまとめて加入することが一般的です。
車検のときにまとめて支払う際に利用しやすい月数の自賠責保険料(令和3年4月1日現在)は以下の通りです。
36ヶ月:27,180円
24ヶ月:20,010円
12ヶ月:12,700円
36ヶ月:26,760円
24ヶ月:19,730円
12ヶ月:12,550円
この他、営業用乗用自動車、貨物自動車、小型二輪自動車、特種用途自動車などにも同様に自賠責保険料は決まっています。
自賠責保険は車検と期間がほぼ同じになっていることが一般的です。理由としては、車検を通す際に自賠責保険の加入が必須条件だからです。
新車を購入後、初回の車検は3年ですが、それ以降は2年ごとに行いますので、自賠責保険についても24ヶ月分をまとめて支払います。
そのため、車検時に基本整備費用の他に自賠責保険料を請求されるのは通例です。まとめて支払いを行っているのであれば、自賠責保険の有効期限は車検の有効期限と同じになります。
したがって、自賠責保険の残り期間を簡単に知る方法として、車のフロント部分に貼ってある車検シールの有効期限を確認すればよいでしょう。
ただし、車の乗り換えをした時、中古車の購入をした際は、車検と自賠責保険が一致していないケースも考えられます。その点は、購入時に業者と確認しておくことでうっかり切れている状態にならないようにしておきましょう。