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車を買い取ってもらうと、売却したことで利益を得る場合もあります。そうなると、給与と同じように所得を得ることになるので、売却代金に所得税が課税されるのではないかと思う方もいるかもしれません。
確かに、税制度では収入を得たら所得に応じて所得税が課税されるという仕組みになっています。車の売却と税金はどのように関係してくるのか、どういった場合に所得税が課税されるのかという疑問を解消できるよう、説明していきます。
所得税とは
所得税は、1年間で得た所得に対して課税される税金のことです。具体的には、その年の1月1日~12月31日までの期間、収入から必要経費を差し引いた金額に対して課税されます。
医療費や家族構成に応じて税金が控除される場合もあるため、この控除分も所得から差し引かれます。
所得から必要経費や控除を引いた額に税率をかけることで、所得税が算出されています。
税率も、所得や控除額などによって適用される値が個々のケースで違ってきます。
会社に勤務している場合、勤務先の給与から所得税は自動的に支払われているため、あまり自分で計算したことはないという方も多いでしょう。ただ、自営業者や個人事業主などは自分で収支を管理しているので、収入を得たら所得税を計算して申告しなければならないことになっています。
住宅ローンを組んで返済している場合や医療費を多く支払った場合は、払いすぎた税金が一部返還されることもあります。
副業などで得た収入や、不動産による所得などに対しても所得税は課税されるので、申告して納めなければなりません。
車の売却で所得税がかかる条件
車を売却すれば、給与以外に収入を得る可能性があります。売却によって利益が出た分に関しては、所得を得たということで所得税の課税はなされます。
ただし、車を売却した場合全てのケースで必ずしも所得税が課税されるわけではありません。
所得税の課税対象となるのは、まず売却することで利益が出たのか、つまり売却代金が購入代金を上回ったのかどうかです。
また、車がどのような目的で使用されていたのか、その用途も関係してきます。
安く買って高く売れれば、差額分が利益となりますが、利益を得たとしても、即所得税が課税されるわけではありません。それは、所得税の対象から控除される金額が決まっているからです。つまり、所得税が課税される条件は、控除額を上回る収益がでたのかどうかで決まります。
車を売却して所得税が課税される条件としては、売却することで利益を得た場合に限ります。これは車を購入した金額よりも、売却した際の金額が高い場合ということです。
車は、一般的に年月の経過と共にその価値が下がっていくと考えられています。新車で購入してから3年経つと購入額の約60~50%、5年経過すると約40~30%の値段になるとされています。
もちろん、車種によって違いはあるので一概には言えません。ただし、新車で購入してあまり使用していなくても、価値が下がる場合がほとんどです。
特にモデルチェンジが行われた後は、新モデルの車に人気が集中するため、中古車価格は下がりやすいです。
購入から数年乗って売却するのであれば、売却金額が購入金額を上回ることはまずないと言えるでしょう。稀に希少価値の高い車やプレミアがついているような車だと購入時よりも高く売れる可能性があります。
次に、車の用途に関しても所得税が課税される条件があるので注意しましょう。
車の用途はレジャー目的もしくは業務用のみ所得税の課税対象となります。つまり、通勤や通学目的に交通手段の一つとして車を使用していた場合は売却による利益が出たとしても所得税課税対象とはなりません。
レジャー用というのは、コレクションとして趣味の一環で所有していたり、休日に余暇を楽しむために所有していたりという意味になります。
レジャー用かどうかは判断が難しい場合もありますが、例えば、高級なスポーツカーやキャンピングカーなどが当てはまると言えるでしょう。
ただし、外見上レジャー目的と思われる車を通勤のために所有していたとしても、非課税とは認められない場合もあります。
車の用途に関しては、レジャー用の他にも業務用の車は課税対象となります。これは、車を買取販売している業者や自動車販売店などは、車を売買することで収益を上げているからです。
車を商売の目的としていなくても業務用となる場合も多いです。例えば営業で他社に出向く際の移動の手段や、商品を運搬する手段として使っている場合が当てはまります。
こういった場合でも仕事に車を使っていれば業務用車となり、所得税の課税対象です。
ただし、仕事で使用している車を売却すれば、売却で得たお金を事業の維持のために資金として使うこともできます。また、経営に必要なものを購入することも可能です。そのため、車の売却により得た代金は所得となるため、所得税の課税対象として扱われます。
ほとんどのケースでは所得税はかからない
実際に車を所有、使用している方のほとんどは、毎日の通勤や通学、買い物や通院、送迎などに使うことが多いでしょう。
厳密に車の用途も通勤・通学だけに使用しておらず、日常生活で欠かせない移動手段として使っていれば通勤通学目的に含まれます。そのため、所得税の課税対象となる可能性は低いと言えます。
また、仮にレジャー目的で所有しているとしても、車の売却価格が購入価格を上回るというケースも現実には稀です。そのため、個人所有の車を売却して得た利益は課税対象に含まれないことが多いです。
ただし、クラシックカーなどは日常生活に欠かせないものではなく、プレミアがつくと売却代金が跳ね上がる可能性もあります。一部のカーマニアにとっては、かなり価値が高いものとして認識されています。
車を、日々の通勤や通学に使っているような場合は車の所有は交通手段であり、利益を得ようと考えているものではないとみなされます。そのため、車の用途が通期、通学目的の場合は所得税の課税対象とはなりません。
また、通勤通学以外にも駅や習い事に子供を送迎する、親を通院のために病院まで乗せていく、買い物などの使用もあるでしょう。
細かく言えば、通勤や通学だけに使用していなくても日常生活において交通手段として利用してる場合も、同様にレジャー目的ではないので、非課税となります。
所有車をレジャー目的もしくは業務目的で使用していた場合であり、かつ車の売却額が購入額を上回った場合、利益が生じます。そして、その利益は「譲渡所得」として扱います。
譲渡所得とは、基本的に資産を譲渡、売却した際に生じた所得のことです。ただし、全てのものに当てはまるわけではなく、車、建物、不動産などの資産に限定されています。他にも株式、宝石、絵画、骨董品などの美術品やゴルフ会員権などが当てはまります。
基本的に日常生活に欠かせないような家具といった生活用の動産などは、譲渡所得には含まれません。また、事業用の商品や山林などの譲渡は当てはまらないこととなっています。
車をレジャー目的で所有していて、プレミアがついて売却代金が購入代金を上回ると、売却により利益を得ることになります。これを売却益と言います。
売却益が出た場合であっても、所得税が課税されるというわけではありません。車の売却に関しては、特別控除額として50万円が設定されています。この特別控除額というのは、売却益のうち50万円は課税対象から免除するというものです。
控除は個人の事情を考慮した上で、税負担を軽減させようという考えの元、譲渡所得の制度として取り入れられています。そのため、売却益が50万円を超えない場合は、結果的に所得税はかからないことになります。
車を通勤、通学などの日常生活で必要不可欠な移動手段として使っていた場合、売却益が出たとしても所得税は課税されません。
ただし、同じ譲渡所得の中でも価値が高いものは所得税がかかってきます。つまり、車に関してもコレクションしている、趣味で所有している場合は、日常生活では欠かせない移動手段としての必需品としては認められません。
通勤、通学目的なら日常生活で必要となるため少しでも税負担を減らそうという意図があったとしても、趣味の車ではそういった配慮は認められません。
趣味で所有している車を売却して、もし特別控除額を超える売却益が出た場合は所得税を納める必要があります。
課税対象額を計算しておく
車の売却で所得税がかかると予想される場合、課税対象となる金額をあらかじめ計算しておきましょう。
課税額の計算はシンプルなので、慣れていない方でも割と簡単にできます。
まず車の売却でいくらの利益を得たのか「売却益」を調べましょう。売却益は、車の売却額から購入額を引いて、そこから特別控除額50万円を差し引いて算出します。
所得税がいくら課税されるかについては、売却益に所得税率をかければ算出可能です。所得税率は「超過累進税率」が採用されています。
超過累進税率は、所得が高くなるにつれて段階的に高くなり、全ての人が公平に税を負担するような仕組みになっています。年収によって所得税率が変わるため、個人個人でそれぞれ所得税額が違ってきます。
例えば、年収330万円~650万円の場合、税率は20%というように、国によって決められています。
売却益は具体的にどう計算するのか見ていきましょう。
例えば、以下の内容が条件だと想定します。
・車の購入額は150万円
・売却額は230万円
・車の用途はレジャー用
230万円-150万円-50万円=30万円
控除額の50万円を差し引いても譲渡所得が残るので、30万円に関しては所得税の課税対象です。
また、車を200万円で購入し、150万円で売却したとしましょう。この場合は控除額を差し引くまでもなく、マイナスとなってしまいます。つまり売却損となるため、そもそも所得税の課税対象からは外れるということになります。
所有期間に応じて計算式が変わる
車の売却において、譲渡所得や所得税額を算出するには、車の所有期間に注意しなければなりません。
車の所有期間の長さによって、課税対象となる譲渡所得には違いが生じます。
購入から売却までに車を所有していた期間が5年を超えていれば「総合長期」となります。逆に車の購入から売却までが5年以内であれば「総合短期」となります。
総合短期の場合、売却益を求める計算式は先程の方法で問題ありません。
ただし、所有期間が5年以上の総合長期ならば、算出した売却益はさらに半分になります。これは、所有期間が長い車は、売却して利益を得たとしても長期にわたり乗っていたので経済的であるため、所得税の負担を軽減させようという考えによるものです。
車の所有期間が5年以上の総合長期と5年に満たない総合短期の場合、車を売却した時の売却益の計算式は異なります。
売却価格-購入額-特別控除50万円
(売却価格-購入額-特別控除50万円 )÷2
それでは実際に計算してみましょう。
以下の内容が条件だと想定します。
・車の購入額は170万円
・車を2年使用
・売却価格280万円
以下の内容が条件だと想定します。
・車の購入額は170万円
・車を7年使用
・売却価格280万円
このことから分かる通り、長期的に車を所得したほうが所得税の課税対象は少額になります。
他の所得と合算し所得税額を算出する
車を売却して得た利益を含む譲渡所得は、他にも所得を得ていれば合算しなければなりません。合算した利益に対して課税される「総合課税」に含まれるためです。
車以外にも土地、建物、株式などの資産を売却して収益が出れば、譲渡所得として合算されます。
年間の譲渡所得を全て合算した上で、個々の所得額に応じた所得税率をかけます。そうすれば、課税される所得税が大体いくらになるのかを把握することが可能です。
課税分は確定申告を行う
車を売却して、利益を得て所得税課税の条件を満たしている場合、所得税を納める必要があります。自分で確定申告を行い、納税しましょう。
会社勤めで給与から所得税が天引きされている場合は、会社で納税してくれています。
しかし、車の売却益に対する所得税の納税は個人の所得なので、自分で確定申告する必要があります。
確定申告は売却益が発生した翌年の2月16日~3月15日までの間に行わなければなりません。
会社からもらえる給与所得の源泉徴収票や、自動車の売却益の計算書といった書類が必要です。
どのような書類が必要か個々のケースで異なるので、国税庁のホームページで確認しておきましょう。また、国税庁のWebサイトからも申請書などが作成できます。
書類の準備ができたら、税務署まで出向いて書類を提出します。もし税務署まで行けない場合は、郵送もしくはe-taxを利用してネットからでも手続きが可能です。
書類の書き方などが不安な方は、面倒ですが直接税務署に出向けば職員に教えてもらえます。
確定申告の手続きはやや複雑なので、必要書類をきちんと確認した上で期日までに手続きできるように準備しましょう。
課税対象の車を売却した場合は要注意
個人名義の車を売却する際は、所得税が課税される条件が決まっています。
所得税の課税対象は、レジャー目的もしくは業務用の車で、売却益が50万円を超える場合です。
こういったケースはかなり少ないので、所得税が課税される可能性は低いと考えていいでしょう。ただ、中には条件が当てはまり、所得税が課税される場合もあるので車を売却した時は注意が必要です。