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亡くなってしまった家族の車を相続する場合、名義変更などの相続手続きが必要となります。
しかし、車の名義変更をする機会は頻繁にあるものではありません。どのように手続きすればいいかよくわからない人もいるのではないでしょうか。
今回は、車の持ち主が亡くなってしまった場合の売却方法についてご紹介します。
持ち主が死亡した車を売却するには?
車は家電などとは違い、法律によって「所有権」が定められています。
車の所有権を持っていた家族が亡くなってしまった場合、車の所有者の名義変更手続きをしなければなりません。
なぜ名義変更の手続きをする必要があるのでしょうか。また、相続しなかった場合はどうなるのでしょうか。詳しくみていきましょう。
車には所有者を登録することが定められているため、その所有者が亡くなってしまったときは相続人全員の共有財産になります。
ただし、亡くなったからといって自動的に所有者が変更されるのではありません。決められた手続きを行って所有者の変更、つまり名義人変更をしなければなりません。
車は、家や土地と同じく資産となるため、所有者の許可なく勝手に売却や廃車にすることは不可能です。そのため、故人の車を売却や廃車にするには相続手続きを行ったうえで名義人を変更する必要があります。
ここで重要なのは、相続手続きを行う前に「自動車の名義人を確認すること」です。故人が使用していた車であっても、所有者の名義がリース会社やローン会社になっているケースがあるからです。
故人の車を相続できるのは法定相続人のみで、たとえ身内や故人と親しい方でも、法定相続人でなければ相続権利はありません。法定相続人に該当するのは、おもに故人の配偶者やその子ども、孫、両親、兄弟、姉妹などです。
名義変更のための相続手続きを行うならば、まずは法定相続人が誰なのかを確認しておきましょう。
車の所有者が亡くなったときは、所有者を変更するために名義変更を行わなければなりません。
道路運送車両法では、以下のように定められています。
「新規登録を受けた自動車(以下「登録自動車」という。)について所有者の変更があつたときは、新所有者は、その事由があつた日から十五日以内に、国土交通大臣の行う移転登録の申請をしなければならない。」
名義変更しないと相続人の財産として認められないため、車の売却や抹消登録などの手続きはできないことになっています。
また、故人名義の車で事故を起こしてしまうと、自賠責保険以上の金額は補償されない可能性もあるので注意が必要です。そのため、車の売却や廃車をするときは、必ず名義変更を行っておきましょう。
相続(名義変更)の手順
故人が所有していた車を相続するためには、どんな手続きを行えばよいのでしょうか。
車の名義変更をするには必要な書類を揃えて所定の手続きを行わなければなりません。また、相続といっても、単独で相続するのか共同で相続するのかで手続きの方法が異なります。
ここからは、名義変更の手順と必要な書類について詳しくご紹介します。
①名義を確認
最初に自動車検査証を準備して、車の所有者を確認しておきましょう。車検証の所有者の欄に記載されている人物が、その車の名義人です。
相続人が複数いるときは、相続人全員の共有財産となるので、車を誰が相続するか話し合って決めないとなりません。相続人ひとりだけで車を相続するときは「単独相続」、複数人の相続人が相続するときは「共同相続」となります。
また、故人が所有していた車だとしても、車の名義が故人であるとは限りません。例えば、リースで使用していた車であれば、故人ではなくリース会社の名義になっていることもあります。
もしリースの支払いが残っていれば、相続人が借金を引き継ぐことになるので、返済義務が発生します。
故人の車の名義は、大きくわけて以下の3つのケースがあります。
- 故人
- 信販会社
- リース会社
ローンを組んで車を購入したときは信販会社名義であり、リースで使用しているときはリース会社名義です。
道路運送車両法では、所有者が亡くなって名義変更をする場合、所有者が変わってから15日以内に手続きをしなければならないと定められています。そのまま名義変更しないと、車を売却できないなどの不都合が生じます。
車が故人以外の名義であるときは、誰の名義かによって名義変更の手続き方法が異なります。名義が信販会社かリース会社かどちらかを確認したうえで、名義変更手続きを行いましょう。
故人が生前にローンで車を購入した場合、車検証には「所有者は信販会社」「使用者は故人」として記載されているはずです。この場合は、相続人がローン会社に連絡して債務者である故人が亡くなったことを伝えましょう。
ローンの残債があるときは、相続人が借金を相続し、残債を返済しないといけません。ローンを完済しないと信販会社の所有権を解除することができないので、名義変更を行えないからです。
ここで残債が残っているときは、通常は一括返済を求められます。ローンを引き継ぐとなれば、相続人も信販会社の審査を受けなければなりません。そして、審査通過後に再契約という形になります。
相続した車に乗らないときや残債の返済が難しいときには、信販会社に車を売却してもらい、売却金を残債返済に充てることが可能です。それでも残債が残っているのであれば、相続人が返済しなければなりません。
一方、残債がないのであれば、そのまま名義変更手続きに移ることが可能です。
車の名義がディーラーになっているときも信販会社と同様で、売却することはできません。所有者がディーラーということは、ローンが完済されていないことを示しているからです。この場合も、ローンを完済してから所有者の名義変更をするようにしてください。
完済して名義変更する方法のことを「所有権解除」といいます。この手続きをしておかないと、たとえローンを完済したとしても所有者はディーラーのままとなってしまうので、注意が必要です。
②必要な書類を揃える
故人が使っていた車の名義が誰であるか確認したあとは、名義を相続人に移す手続きを行いましょう。
相続する場合、「単独相続」か「共同相続」のどちらにするかで手続き方法が異なります。
単独相続は、自分の他に故人の車の相続人がいない場合、もしくは相続人が複数人いる中で名義を誰か1人にする相続形態をいいます。相続人が複数いたものの、欠格や相続放棄などの理由で単独で相続することになったというのも単独相続に多いケースです。
一方で共同相続は、故人の車の相続人が複数人おり、車の名義を複数人にする、つまり共同名義にする相続形態をいいます。
どちらで相続するかによって手続きをする際に必要な書類も違います。売却することを決めたら、まずは誰が故人の車を相続するかを決めておきましょう。
査定金額100万円以上の普通自動車を、複数の相続人のうち1人が単独相続するケースでは以下の書類が必要です。
- 自動車検査証(有効期限内のもの)
- 故人の死亡が確認できる戸籍謄本や除籍謄本など
- 遺産分割協議書(相続人全員の署名と捺印のあるもの)
- 相続人全員の戸籍謄本または戸籍の全部事項証明書
- 代表相続人の実印が押された委任状
- 代表相続人の印鑑証明書(発行後3ケ月以内のもの)
- 車庫証明書(40日以内のもの)
もしも、ディーラーなどに名義変更を行ってもらうのであれば、委任状も必要です。
相続人が未成年だと、法定代理人の同意か法定代理人が名義変更を行います。
これらの書類について、以下で説明します。
もともとの車の所有者である故人が亡くなったということを証明するために、戸籍に記録されている全員について証明できる「戸籍謄本」や婚姻や死亡などによってその戸籍から外れていることを証明できる「除籍謄本」が必要です。
また、戸籍謄本を改正したなら、改正前の謄本を用意しなければなりません。
相続人が相続対象の誰かを、故人の車の相続人として認めたということを証明するために必要となる書類です。相続人全員の実印が押印されている必要があります。
遺産分割協議書には、車を遺産として相続したことを記載しなければなりません。相続人全員の合意があって、はじめて有効となる書類です。
査定金額100万円以下の普通自動車の場合は不要となります。
相続する人物である、代表相続人の印鑑証明書が必要です。ただし、発行から3ヶ月以内の印鑑証明書のみ有効なので、発行した日付を確認しておきましょう。
印鑑証明書は役所で取得することができます。もしも印鑑登録していない場合は役所で手続きを終えてから証明書を発行してもらいましょう。
代表相続人の実印を用意します。必ず実印で押印する必要があるため、シャチハタなどの簡易的な印鑑を使うことはできません。
特別な理由がなければ、実印を使うようにしてください。相続人以外が名義変更を行うなら、相続人の実印を押した委任状を用意しておきましょう。
故人が車の保管場所として使用していた場所と、新しく車を保管する場所が変わるときには、40日以内に発行された車庫証明書を取得しておく必要があります。ただし、保管場所が変わらない場合は車庫証明書が不要になる場合もあるようです。
査定金額100万円以上の普通自動車を、複数の相続人で相続する共同相続では、以下の書類が必要です。
- 自動車検査証(有効期限内のもの)
- 故人の死亡が確認できる戸籍謄本・除籍謄本
- 相続人全員の記載の戸籍謄本や戸籍の全部事項証明書
- 相続人全員の実印が押された委任状
- 相続人全員の印鑑証明(発行後3ケ月以内のもの)
- 車庫証明書(保管場所が変わらない場合は不要になる場合有り)
車は分割できないので、単独相続しないなら共同相続を行います。
これらの書類について、以下で説明します。
相続人全員が記載されている、戸籍謄本か除籍謄本が必要です。
相続人の誰かが、婚姻などによって戸籍謄本から除外しているときは、婚姻関係や出生関係を証明する書類も用意しなければなりません。この場合、婚姻関係証明書などが使用できます。
相続人全員の実印が押されている委任状を用意します。誰かひとりでも押印を忘れると、書類が無効となってしまうので注意してください。
委任状は弁護士などに依頼しなくとも、自分たちで作成できます。委任状のテンプレートがあるので、それを見ながら作成すれば問題なく作成できるでしょう。
相続人全員の印鑑証明書を用意します。それぞれの印鑑証明書は、発行から3ヶ月以内のもののみ有効となるので日付に注意してください。
費用がいくらかかかりますが、役所に行けば取得できます。印鑑登録をしていないのであれば、役所で手続きしてから印鑑証明書を発行することが可能です。
共同相続の場合でも、車を保管する場所を示すための車庫証明書が必要です。共同相続では、車の使用者をひとりに設定し、その人物の車庫証明書を確保します。
ただし、単独相続と同様で故人の車の保管場所と、同じ場所を使うのであれば必要ないケースもあるようです。
第三者に移譲するときも、最初に故人の車検証を見て名義を確認しておきましょう。必要となる書類は以下の通りです。
- 譲渡証明書
- 自動車検査証(有効期限内のもの)
- 故人の死亡が確認できる戸籍謄本または除籍謄本など
- 相続者の記載の戸籍謄本や戸籍の全部事項証明書
- 車庫証明書(保管場所が変わらない場合は不要になる場合有り)
- 相続人全員の実印を押印した遺産分割協議書
- 相続者全員の印鑑証明(発行後3ケ月以内のもの)
- 代表相続人の譲渡証明書・印鑑証明書、実印または委任状
基本的には単独相続や共同相続と同じですが、一部で違う書類が必要となります。
譲渡証明書は、譲渡するときや車の所有者が変わったときなどに、「いつ、誰に譲渡されたのか」を証明するための書類のことです。
この証明書は、国土交通省によって定められた形式のものでないと無効となってしまいます。そのため、必ず形式に沿った内容で作成してください。譲渡証明書は、国土交通省のホームページでダウンロードすることができます。
自動車検査証は有効期限のあるもののみ、名義変更で使用することが可能です。車検が切れていては、名義変更ができないので注意してください。この場合、新しい車検証に書き換えてもらうので原本が必要です。
また、車検証を紛失してしまった場合は、もとの管轄の陸運局で再交付してもらい、新しい車検証を取得してください。
③運輸支局に書類を提出
必要書類を揃えたら、運輸支局に書類を提出します。運輸支局は、車の新しい所有者が車を置く場所の地域を管轄する運輸支局です。
ただし、軽自動車の名義変更をする場合は、運輸支局ではなく軽自動車検査協会に提出します。
どちらも、受付時間は平日8時45分~16時までです。
書類提出時には、新所有者の実印が必要なので忘れないようにしましょう。申請では印紙代、ナンバープレート代、自動車取得税などの費用がかかります。
申請書類を提出して受理されると、新しい車検証が交付される流れです。車検証を受け取ったときに、記載内容に間違いがないか確認しておきましょう。
最後に窓口で、新しい車検証と一緒に自動車税や自動車取得税の申告書を提出します。税金が発生するときは、その場で税額が計算されるので、納付を済ませておきましょう。
ナンバープレートを変更するときは、それまで使っていたナンバープレートを窓口に提出したのち、新しいナンバープレートを購入して車に装着します。
車の名義変更の手続きをする際には、手数料納付書が必要です。このとき、手数料納付書には手数料分の登録印紙を貼り付けなければいけないので、その購入代もかかります。印紙は、陸運局で購入することができます。
また、車の保管場所を変更する場合には車庫証明書が必要です。この証明書を取得する場合も費用がかかります。金額は都道府県によって異なりますが、大体2500円~2800円程度の手数料がかかります。さらに、印紙代などの手数料も発生することを覚えておきましょう。
さらに名義変更で車のナンバーを変える場合は、ナンバープレートを交換する必要もあるため、ナンバープレート代も必要になります。希望ナンバーや図柄ナンバーだと、費用が高くなることも覚えておきましょう。
車を相続するために、名義変更が完了したらようやく車を売却できます。自動車の売却には、以下の書類が必要です。
- 自動車検査証(車検証)
- 自動車損害賠償責任保険証
- 自動車税納税証明書
- 印鑑(実印または認印)
- 自動車リサイクル券
- 印鑑登録証明書(軽自動車の場合は不要)
陸運支局で新しく取得した車検証を用意します。
車を所有すれば、強制加入となる自動車損害賠償責任保険証も用意しておきましょう。これは、車検証と一緒に保管しておくことが多いです。保険証の期限が切れていると車の売却を行えないので、保険切れに注意してください。
自動車税納税証明書は納税を証明する書類です。
印鑑登録証明書は、軽自動車を売却するときは必要ありません。
自動車リサイクル券も、車検証と一緒に保管する方が多いです。
車を売却するには実印が必要となりますが、軽自動車は届け出になるので認印でも構いません。
普通自動車は、委任状や譲渡証明書も必要ですが、これらは通常は買取店などが用意してくれます。
廃車したい場合
故人の車を売却せずに廃車するときは、以下の2つの廃車方法があります。
- 一時抹消
- 永久抹消
車の使用を一時的に中止する場合は、一時抹消手続きを行います。再度利用する前提での手続きとなっており、車の解体は行いません。一時抹消している期間は、税金や保険は発生しません。
車を今後使わない場合は、永久抹消手続きを行います。永久抹消すると、車は解体するので、その後は車を使用することはできません。永久抹消ではリサイクル業者に解体を依頼します。
まとめ
亡くなった人の車を相続する場合、相続後でなければ車の売却や廃車はできないことになっています。ただし、相続するには名義変更の手続きをしなければなりません。
名義変更をするための相続方法は、単独相続と共同相続の2つがありますが、トラブルを避けるためにも単独相続を利用したほうがよいでしょう。どちらの相続方法でも、手続きに必要となる書類がたくさんあるため、いくつもの書類を用意しなければなりません。
また、必要な書類をすべて用意したあとは、陸運支局や軽自動車検査協会などに出向いて、窓口で名義変更の手続きを行いましょう。そうすることで、名義変更後に売却や廃車が可能となります。
故人が使っていた車を売却する際は、手続きの流れと必要な書類を調べてから行いましょう。