車を売る際は、最初に買取り査定してもらうことが必要です。買取り査定の際、査定士は車のどこを見るのでしょう?
ポイントが分かっていれば、その部分に気をつけることができます。そして、査定時にプラスの評価をされることで買取価格が上がるかもしれません。
この記事では、買取り査定時で見られるポイント、査定前にしておくべきこととしなくてもいいことを解説していきます。
車の買取り査定とは?
車の買取り査定とは、車の現時点の状態を評価して価格をつけることです。車は使用状態や使用環境によって状態が異なるため、査定が必要です。
中古車買取業者が査定を行う際は、一般財団法人日本自動車査定協会(JAAI)の査定額算出の方法をベースにしながら、それぞれ独自の価格設定を行っています。
JAAIでは車の標準状態を設定していて、その状態と対象車の状態を比較し、加点または減点をして査定を行います。
買取り査定は、車を直接お店に持ち込んで行うこともできますし、自宅やその他の場所を指定して出張査定をしてもらうことも可能です。
査定そのものにかかる時間は全体で30分~1時間ほどです。ただし、車の状態によってはもう少し時間がかかる可能性があります。
査定が終了した後、買取価格を提示されます。買取価格の交渉では、いくつか気をつけることがあります。他の業者に査定してもらっていたとしても、その価格をできるだけ明かさないこと、また自分から希望買取価格を伝えないことです。
他社の価格や希望価格を伝えてしまうと、仮にその価格以上をつけられるとしても、業者としてはあえて提示しようとは考えません。自ら高額買取の可能性を潰してしまうことになるので、注意が必要です。
買取り査定でチェックされるポイント
車の買取り査定では、どこをチェックされるのでしょう?
一般的に30分~1時間ほどしている「査定の内訳」は、以下のようになっています。
- 外装・・・10~20分ほど
- 内装・・・5~10分ほど
- 足回り・・・5分ほど
- エンジンルーム・・・5~10分ほど
なお、JAAIで設定している「車の標準状態」とは、以下になります。
- 外装や内装が無傷
- エンジンや足回りは走行に支障がなく良好
- 車検の残り月数が3ヶ月以内
- 走行km数は標準
- タイヤの残り溝はスリップサインの1.6mm以上
- においや腐食などの損傷減価となる要因、改造、修復歴がないこと
標準状態はベースですので、それ以外にも確認されるポイントがあります。ここから具体的に見ていきましょう。
買取り査定で必ずチェックされるのは外装です。一般的に考えて、見た目がボロボロの車に乗りたいと思う方はいないでしょう。そのような意味でも、外装が綺麗かどうかは査定価格に関わる重要なポイントです。
車体に汚れ、へこみ、キズ、塗装のはげた部分があるとマイナス評価となります。最近はキーレスキーやスマートキーの車も増えていますが、それらではない場合、鍵をうっかり差し損ねた際の引っかきキズもマイナスポイントとなるので普段から注意が必要です。
また、車体の色も査定に影響します。人気の高い色、特にブラックやホワイトは個人でも法人でも使用できるということもあり、プラスの評価がつきやすいと言えます。
色にこだわりがないのであれば、新車購入時は人気色を選ぶと、売却する際の査定額が高くなるかもしれません。
その他、外装ではナンバープレート、ガラスや照明類の状態、ドアやウィンドウの動作なども確認されます。
内装も、買取り査定でしっかりチェックされるポイントです。いくら外装が綺麗でも、内装が汚れていたり不快なにおいがしたりする車に乗りたいとは思わないでしょう。
シートやフロアマットのしみ、ダッシュボードやシートなどの破損、ペットやタバコのにおいは、マイナス評価につながります。もしシートの汚れやにおいがひどく、交換が必要な場合には査定額が大幅な減額となる可能性があります。そのため、日頃乗っているときから、汚れやにおいをつけないように注意しましょう。
その他、内装で確認されるポイントとしては、ハンドルやメーター、オーディオやスピーカーが壊れていないか、エアバッグがあるか、トランクの状態などがあります。
買取り査定では、エンジン回りもしっかり見られます。外装・内装は乗る人の便利さ、心地よさのために大切ですが、そもそもエンジンが動かなければ車としては全く意味がありません。そのような意味でエンジン回りは大変重要と言えます。
エンジンに異音がないか、改造パーツがないか、またバッテリー、オイルやプラグの状態も確認します。エンジンの故障やバッテリーの劣化はマイナス評価の要因となります。
なお、特に重要なのは、エンジンルーム内に記載されている車台番号(車体番号)です。車台番号が改ざんや移植されていることが分かった場合、買い取ってもらえないことがあります。
その他、エンジンルーム内に汚れがないか、エンジンの焼き付きがないか、バッテリーの状態、排気ガスの色やアイドリングが不安定でないかなども確認されます。
足回りや下回りも、査定の際に確認されます。
マフラー、タイヤやホイールの状態、車の高さ(サスペンションなど)、オイル漏れ、各パーツの錆びやキズなどを見られるでしょう。
タイヤについては、残り溝が1.6mm未満だとマイナス評価となります。
買取り査定時には年式にも注目されます。新しい車であれば部品交換や故障のリスクは低く、また買い手もつきやすいため、高額査定となることが多いです。
車は古くなればなるほど故障しやすくなるため、価格は下がるのが当然と言えます。初年度の登録から13年以上経過すると自動車税と重量税が上がってしまうこともあり、査定時にはさらにマイナス評価です。
しかし、中古車市場では3年落ちや5年落ちの車が多く出回っているため、それほど古くないとしても価値が下がってしまうので注意しましょう。この場合も、プラスの査定はあまり期待できないと言えます。
走行距離も必ず買取り査定で確認される項目です。走行距離が長ければ長いほど、部品は摩耗していきます。逆に走行距離が短すぎる場合も、車を動かさないことによりエンジンなどが故障しやすい傾向にあります。どちらの場合でも、評価はマイナスです。
走行距離は長すぎても短すぎてもマイナス評価だと説明しましたが、走行距離が長い、短いはどう判断するのでしょう?
走行距離には、年式によって標準の基準が決められています。
普通自動車であれば年間10,000km、軽自動車であれば年間8,000kmが基準です。
初年度であればそのまま10,000kmもしくは8,000km、4年が経過した車であれば40,000kmもしくは32,000kmが標準の走行距離となります。
この標準をはるかに上回る、もしくは下回る場合には注意が必要です。なお、標準の走行距離より少し下回るくらいの場合には、むしろプラスの査定となる可能性があります。
また標準であったとしても、50,000km、100,000kmといった節目を迎えると査定では大きく減額されてしまいます。そのため、この節目の距離が近づいてきた際には、売るかどうか検討するのが良いでしょう。
車種やグレードも買取り査定時に確認されます。人気の高い車種やグレードは需要も多く、査定時の価格も高くなることが期待できるでしょう。
ただし、グレードは年式が新しい場合には評価されますが、古い場合にはあまり価格には影響しなくなってきます。また、いくら人気の車種であっても状態が悪ければその分減額となります。
買取り査定では、車そのものだけでなく付属する書類や備品もチェックされます。書類や備品があるかないかで、査定価格がかなり変わってくる場合もあります。
必要な書類は以下の通りです。
車検証があるかだけでなく、車検の残り期間も確かめられます。
法的な点検や整備の内容が記載されており、車がどんな状態にあるかをこの書類で確認されます。
車本体だけでなく、カーナビなど各種パーツの取扱説明書もあればプラス評価となります。純正品か社外品かは関係なく、読まないからといって破棄しないようにしましょう。
また、確認される備品は、キーならびにスペアキー、キーレスがあるかどうか、純正パーツがあるかどうかです。純正パーツについては後述します。
買取り査定の際、査定する車がこれまで何人に所有されてきたのかも確認されます。
過去に車を所有していた人が1人、つまり新車で購入した方のみ所有している車を「ワンオーナー車」と呼びます。ワンオーナー車は、複数の人が所有していた車よりもプラスの評価を受ける可能性は高いです。
一般的にワンオーナー車の場合、点検やメンテナンスが定期的に行われていて、状態も良い場合が多く、市場での需要も多いです。
また、買取業者側としても、複数の所有者の場合には以前どんな人が乗っていたのかまでは分かりませんが、ワンオーナーであればどのような人が車に乗っていたのかを把握し、顧客にアピールできるというメリットもあります。
状態の良いワンオーナーの車はプラスの査定を期待できるでしょう。
純正パーツがあるかどうかも、査定の際には重要なポイントです。車を趣味とする方の中には、ルームランプの色の変更、マフラーやホイールなどを交換してカスタマイズを楽しむ方もいます。
しかし、基本的に社外品のパーツはマイナス評価になることが多く、純正パーツが揃っている車はプラスの評価が期待できます。それは、中古車を購入しようと思う人の多くは社外品のパーツより純正パーツを好むからです。
査定の前に純正パーツに戻しておくこともできますが、あえて社外品パーツをつけたまま査定をしてもらった後、純正パーツにした際との差額を確認するという方法もあります。
修復歴がある場合、査定では大幅な減額となります。
修復歴とは、災害や交通事故などによって、車の骨格部分の修理や交換をした車のことです。骨格部分はフレーム、クロスメンバー、インサイドパネル、ピラー、ダッシュパネル、ルーフパネル、フロア、トランクフロアと呼ばれる部分になります。
骨格部分を修理したり交換するということは、車の強度に大きく関わってくるため、重要です。
なお、フレーム以外の修理については「交換歴」「修理歴」と呼び、修復歴とは異なりますので覚えておきましょう。
査定前にしておくべきこと
車の買取り査定を行う際に慌てることなく、また少しでも高額で査定してもらうために何ができるのでしょう?
ここからは、いくつか査定前にできることを紹介していきます。
査定ポイント⑧で説明した書類や備品は事前に確認しておき、査定の際に出せるようにしておくことをおすすめします。
自動車検査証や定期点検整備記録簿は、一般的には車のダッシュボードに入っていることが多いです。しかし、取扱説明書となると別のところに保管してしまうことがあるかもしれません。直前になって探し回ることのないよう、あらかじめ確認しておくと良いでしょう。
査定後、金額に合意し売却となった場合には、普通自動車であれば追加で自動車税納税証明書、リサイクル券、実印、印鑑登録証明書も必要です。併せて確認しておきましょう。
買取り査定前には、車を清掃することが重要です。
外装はほこりまみれ、内装はごみだらけであるなら、査定士としては良い印象を持たず、粗末に扱われている車と判断するでしょう。
逆に外装も内装も綺麗にしてあれば、査定士は大切に使用されていた車と判断し、多少プラスの査定になる可能性があります。
車の中を清掃するときには、ほこりやごみ、シートのべたつきなどを取り除きましょう。
また、車のにおいにも気をつけてください。可能であれば、査定のしばらく前からペットを乗せたり、たばこを吸ったりすることを控えることをおすすめします。
においは、車を走行している際に窓を開けておく、消臭剤を使うといったことで対策ができます。自分では慣れていて、においに気づかないこともありますので、他の人ににおいを確かめてもらうことも有効的です。
トランクは、何かと荷物を入れっぱなしにしておきやすい箇所です。査定時は、当然のことながら荷物がないほうが車を見やすく、査定しやすいため、トランクの荷物も整理して不要なものを出しておきましょう。
スペアタイヤがトランクルームの下に収納されている車であれば、トランク内の整理と併せてスペアタイヤについても確認しておいてください。
査定前にしなくてもいいこと
これまでは買取り査定の前にしておいたほうが良いことを見てきましたが、査定前にしておかなくても良いこともあります。
まずは、車のキズやへこみをわざわざ修理しなくていいということです。キズやへこみを修理して綺麗にしても、査定で上乗せされる金額よりも修理代のほうが高くつくこともあります。下手にいじらず、そのままにしておくほうが良いでしょう。
また、タイヤについても同様のことが言えます。溝が1.6mmを下回っているからといって交換しても、元がとれないため、何もしないのが得策です。
その他、査定で注意するべきこと
その他にも、査定で注意しておくと良い点がありますので、最後にいくつか紹介します。
修復歴のある車は買取り査定で減額されますが、だからといって修復歴を隠すことはしないようにしましょう。
車の売買契約書には、重大な瑕疵や欠陥について正直に申告する旨の内容が記載されています。基本的には、査定時に査定士が見抜くと思いますが、隠していたことで心証は悪くなり、さらに何か隠しているのではないかと疑われることになりかねません。
また、査定では気づかれなかったとしても、後日隠していたことが判明した場合には、買取業者から損害賠償を請求される可能性があります。そのため、修復歴は査定時に必ず正直に伝えるようにしてください。
買取り査定は、可能であれば1社ではなく、3~4社に依頼するのことをおすすめします。
査定の基準は同じとはいえ、買取業者によって重視するポイントが車体のコンディションだったり、走行距離だったりと異なってきます。また、査定士の技術・知識・経験は人それぞれです。
それらの要因で買取業者によっては金額が大幅に変わることがあるため、相見積もりをとることは大切です。
相見積もりをとることで、自分の車の相場がどれくらいなのかも分かり、大きな損をすることも避けられるでしょう。